2)腎細胞癌

泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科

腎臓の実質にできる充実性の腫瘍は、およそ90%が腎細胞癌で発生頻度は人口10万人あたり8人前後です。腎臓に限局した(転移のない)腎細胞癌の治療の基本は外科的摘除で、いわゆる抗癌剤や放射線治療は効果が低いと考えられています。進行例に対しては外科的摘除に加えて補助療法として分子標的薬や、新規免疫治療薬などの免疫療法による治療を検討します。

手術療法

腎臓に発生した腫瘍を確実に体内から完全に摘出することが目標です。この手術には色々な方法がありますが、患者さんの状態、腫瘍の大きさ、腫瘍の位置などで決定します。近年は画像診断の進歩によって早期癌が増加しており、腎臓癌に対する手術全体の90%以上を占めています。7cm以下の腎腫瘍に対してはロボット(ダヴィンチXi)支援下腎部分切除術を標準術式としていますが、大きな腫瘍や病期が進行している場合には開腹術による拡大手術を行います。それぞれの患者さんに応じ癌の根治性と腎臓の機能温存を考慮し、ベストと考えられる術式を決定しています。

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①腎部分切除術

近年の画像診断(超音波やCT)の普及で、自覚症状のない小さな腫瘍が発見される機会が増加しています。腎臓全部を摘除するのではなく、腫瘍を含めその周囲を切除して出来る限り腎機能を温存することが可能です。7cm以下の腎臓がんにはロボット(ダヴィンチXi)支援下腎部分切除術を標準術式としており、小さな腎臓がんに対する腎部分切除術では術後の腎機能は良好に温存され、再発率は低く良好な結果を得ています。これまでのわれわれの実績では手術から退院までの日数は7日、開腹手術への移行は0%、輸血も0%です。

②腹腔鏡下手術

1cm程度の穴(ポート)を3〜4つあけて、腹腔鏡を使ってお腹の中で手術を行います。腎部分切除術では治療が困難な進行した腎臓癌には腹腔鏡下手術による根治的腎摘除術を行っています。

③開腹術

お腹を切って、腎臓の血管を処理してから、腎臓の周囲を剥離する手術です。極めて大きな腫瘍や転移などを有する進行期癌を適応にしています。

薬物療法

①分子標的薬

摘除不能な腎細胞癌や転移性腎細胞癌に対する治療法で高い治療効果が得られる反面、副作用も多いため慎重な投与が必要です。当科での治療経験数は国内でもトップクラスであり、その実績を国内・海外へ発信しています。

②新規免疫治療薬immuno-oncology drug(I-O drug)

摘除不能な腎細胞癌や転移性腎細胞癌に対し、がんに対する免疫によりがんの進行を抑える治療として免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(オプジーボ)、イピリムマブ(ヤーボイ)、キートルーダ(ペンブロリズマブ)、アベルマブ(バベンチオ)などによる新規治療も積極的に行なっています。これまでは治療が難しかった未治療の進行または転移性腎細胞がんにおいてさまざまな最先端医療も可能です。