IVR
血管造影検査とは
どんな検査?
鼠径部や腕の血管から1~2mm程度のカテーテル(細い管)を挿入し,そこから造影剤を注入し目的の血管や病巣を映し出します。血管造影は、心臓や脳などの重要な臓器の検査に広く使用されています。
どんなことがわかる?
血管自体の病変(狭窄:内腔が狭くなっている,閉塞:内腔が詰っている,動脈瘤:拡張している,血管の奇形,血管が破れて出血している等)
がんなどの悪性腫瘍の鑑別診断
どれくらい時間がかかるの?
検査部位により異なりますが,おおよそ30分~2時間程度かかります。
危なくないの?
血管造影は一般的に安全な検査ですが、まれにアレルギー反応や造影剤の副作用が起こることがあります。事前に医師にアレルギーの有無や過去の副作用の経験を伝えることが重要です。
刺した場所からの出血する場合がありますので、カテーテルを抜いてから約6時間(場合によって異なる)ベッド上で安静にしていただきます
どんな治療をするの?
適応疾患は多くあり、以下に代表的なものを挙げます。
頭頸部領域
脳動脈瘤に対するコイル塞栓術
頭頸部領域では、脳動脈瘤に対する塞栓術、頸動脈狭窄に対する拡張術などが行われています。
脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を引き起こし、生命を左右することもあります。治療には、開頭クリッピング術や血管系IVRであるコイル塞栓術が行われます。コイル塞栓術とは、カテーテルを通して塞栓物質であるプラチナコイルをつめていく治療法です。これにより、血液が流れ込まなくなり、動脈瘤の破裂を防ぎます。
コイル塞栓術が困難な場合、開頭クリッピング手術となります。開頭手術は頭蓋骨に穴を開けて行いますが、骨の下を動脈や静脈が多く走行しているため熟練の医師でも慎重に行う必要があります。
当院はMRIやCTはもちろん、脳神経外科の医師と密な連携を取り、手術支援画像の作成に力を入れています。実際の手術で大いに役立てられており、その画像の質の高さが評価され、2023年に行われた日本脳神経血管内治療学会学術集会内で実施された『Oben One 1-アンギオワークステーション対決!-全国決勝戦』にて当院若手放射線技師が見事優勝を勝ち取りました。
頸動脈狭窄に対するステント留置術
頸動脈は主に脳の前頭葉、側頭葉、頭頂葉という重要な部分を栄養している血管です。その根元の部分である起始部(喉のあたりにあります)の狭窄は将来的に大変広範囲な脳を損傷させ、結果として重篤な脳卒中後遺症を引き起こす潜在的リスクがあります。
頸動脈ステント留置術は、細い部分を風船のついたカテーテルで押し広げ、その後に、ステントという形状記憶合金でできた筒を内張のように留置する治療です。
腹部領域
胸腹部領域では、肝細胞がんに対する抗がん剤を用いた動脈化学塞栓療法、消化管出血に対する塞栓術などが行われています。
肝細胞がんとは、肝臓に発症する悪性腫瘍で、肝硬変や肝炎を原因とすることが多い疾患です。肝細胞がんの治療には、外科的切除や局所療法、血管系IVRである動脈化学塞栓療法などがあります。
動脈化学塞栓療法は、腫瘍に栄養を送る動脈に抗がん剤と塞栓物質をカテーテルから流して行う治療法です。
外科的切除とちがい、肝臓の機能を確認しながら繰り返し行うことができます。
コーンビームCTとは、血管造影装置を使って、三次元画像を作成することができ、画像を確認しながら治療を進めることができます
心臓領域
心臓カテーテル治療の対象となるのは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や不整脈などがあります。
狭心症とは、動脈硬化により心臓を栄養している冠動脈が狭窄し、心筋に十分な血液が送られなくなることにより、一過性の虚血が起こり胸痛や圧迫感等の症状を伴います。
冠動脈に対する冠動脈形成術
冠動脈に対するIVRは冠動脈形成術(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)といいます。
狭窄や閉塞した冠動脈に対して、カテーテルを用いて治療を行います。肘や手首などの動脈からカテーテルを挿入し、バルーンやステントを用いて治療を行います。また、硬い病変に対しては、医療用のドリルを用いて、血管の内側から病変部を削る治療法もあります。
不整脈に対する心筋焼灼術(アブレーション)
不整脈の治療は、早い脈拍の不整脈に対して行われます。早い脈拍は、正常な刺激伝導系以外に異常な伝導路が存在し、そこを信号が通り早い興奮が発生します。
治療は、心筋焼灼術(アブレーション)とよばれ、心臓の中に電極カテーテルを通して、高周波を通電して焼灼することで不要な伝導路を遮断し、不整脈の発生を防ぎます。