ここまで進んだ早期胃がんの内視鏡治療

内視鏡内科

最新がん統計によりますと、2022年の胃がんによる死因は男性では第3位、女性では第5位で、男女計では肺がん・大腸がんについで第3位です。以前に比べて徐々に減少傾向にありますが、それでも依然として高い死亡数です。

では、どのようにしたら早期に胃がんが発見されるでしょうか? 早期胃がんではほとんど症状はありません。たまたま受けた上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、または上部消化管X線検査(バリウム)で発見されることが多いです。

胃がんの内視鏡治療の適応に関しては、主にがんの深さ、大きさ、がんの顔つき(組織型)によって決まります。すなわち、浅い病変が内視鏡治療の適応になります。具体的には胃壁は内側より粘膜層、粘膜下層、筋層などの層からなり、そのうち粘膜層または粘膜下層に一部浸潤したがんになります。大きさはがんの顔つきが良いタイプ(専門用語では分化型)では制限がありません。

当院で実施している内視鏡的粘膜下層剥離術(英語ではESD:endoscopic submucosal dissectionと言います)について説明します。大きさ80mm大の隆起した病変です(写真1)。まず病変の周囲に目印をつけその外側に液体を注入し専用のナイフで切開します(写真2)。次に病変の下にもぐりこみはぎ取ります(写真3)。切除した部位に出血のないことを確認し終了します(写真4)。切除した病変を口から取り出し組織診断します(写真5)。切除後は翌々日から食事を開始し、入院期間は7日間です。体には全く負担がありません。このような大きな病変は以前内視鏡で切除することが出来ず、最初から外科手術になっていました。現在、早期胃がんに対するESDは標準治療になっており、当院でも年間150〜200件施行しております。偶発症(出血,穿孔など)も非常に少なく安全な治療です。

ぜひこれまで一度も上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けたことがない方は、検査をお勧めします。当院内科(消化器内科)外来、あるいはかかりつけ医にお気軽にご相談ください。

※写真は患者さんの許可を頂いて掲載しています。

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(副院長 永田 信二)