病理診断科

病理診断とは?

病変部分から細胞や組織を採取して顕微鏡で観察することにより、様々な疾患を形態学的に診断するもので、病理医や細胞検査士の資格をもつ臨床検査技師が担当しています。特に腫瘍などでは病理診断が最終診断となりますので、多くの疾病において治療方針の決定に直接関わる重要な検査です。

病理診断は、以下の4つに大別されます。

  • 細胞診断
  • 生検材料の組織診断
  • 手術で摘出された臓器の組織診断
  • 術中迅速診断

細胞診断(細胞診)

細胞診断は、体の中から少量の細胞を採取して、プレパラートというガラス板に細胞を広げて標本を作成し、顕微鏡で細胞を観察して診断するという検査です。細胞の取り方には、体から出る液体を遠心分離して細胞を集める、病変部をこする、細い針で病変を刺して吸引する、といった方法があります。患者さんへの負担が比較的少ないため、検診を含め、よく行われる病理診断です。

パパニコロウ染色 400倍(乳腺髄様癌)
パパニコロウ染色 400倍(乳腺髄様癌)

例えば、肺がんでは痰の中にがん細胞が混じることがあります。

その場合、痰を顕微鏡で調べることにより、がん細胞を見つけることができます。これが細胞診断です。

その他、乳腺や甲状腺などの体の表面から近い臓器では、針で病変を刺したり、子宮頸部では表面をこすったりして、病変から細胞を採取することがでます。

本院では、学会認定資格をもつ細胞検査士が顕微鏡下に選別検査(スクリーニング)を行っており、細胞診指導医(病理医)が陽性例を中心に診断しています。また、細胞検査士は、乳腺や甲状腺、耳下腺などの針で病変を刺して吸引する検査では、採取現場に行って医師が行う細胞採取の補助も行っています。

生検材料の組織診断

病変の一部を切除して質的診断を目的に病理組織診断を行う検査を「生検(組織診断)」といいます。

もっとも高頻度に生検されているのは、胃の内視鏡検査時です。

組織診断では、細胞診断と異なり、組織を厚さ約4μmの厚さに薄く切って観察するため、平面的画像の観察となります。

様々な臓器の腫瘍の良悪性を含めた質的診断に、大きな役割を果たしているのが組織診断です。

手術で切除された臓器の組織診断

手術で摘出された臓器は、病理医が肉眼的に観察し、病変の部位、広がりを確認して、診断に必要な部位を切り出します。そして、臨床検査技師が、その組織片から顕微鏡で観察できるようにプレパラート標本を作成します。病理医はプレパラート標本を顕微鏡で観察して、最終的な病理組織診断を行います。最終病理組織診断は、良悪性や、悪性度の判定のみならず、病変の進行程度、病変が完全に取り切れているかの判定、術前治療に対する効果判定、予後判定等、様々な術後の治療方針決定にかかわる重要な情報を提供しています。

組織検査では、特殊染色や、免疫組織化学的染色を加えたりして、より科学的根拠をもって診断を行うこともあります。また、病理組織検体は、免疫組織化学的染色や、PCRを行って遺伝子レベルで詳細な情報を得るゲノム医療の材料にもなっており、これらの検査情報により、がんの治療薬が決定されることもあります。

術中迅速診断

手術中にその手術の方針を決定するために、簡易的にプレパラート標本を作成して診断をすることを、術中迅速診断といいます。たとえば、手術前に病理診断ができない病変、あるいは切除断端組織の良悪性の判断を術中に行うことで、外科医は切除の範囲を決定します。所要時間は20?30分程度です。

組織診断だけでなく、手術中の病変、胸腹水などから細胞を採取して標本を作製し、細胞検査士や細胞診専門医が診断を行う、術中迅速細胞診断もあります。

これらの術中迅速診断の結果は術式決定に直接影響するため、短時間でかつ正確な診断が要求されます。スタッフ全員が、緊張感をもって真摯に取り組んでいます。