膝診療

整形外科・顕微鏡脊椎脊髄センター

Knee Clinic

年齢を問わず膝を痛めるとスポーツや歩行に支障を来し、充実した日常生活を送ることが困難となります。当科Knee Clinicにおいては、個々の症例に対して治療方針を決定して参りますので、膝に関する痛みやお悩みがありましたら、是非お早めにご相談下さい。

Let people move!痛くない膝で毎日、普通に動けるように!

を治療目標に、以下に掲げる5つのション、Mission、Vision、Passion、Decision、Actionを目標・実践できるよう、日々診療にあたっています。

① Mission(ミッション)

広島市北部地域における、膝痛の診断・治療にあたる使命

② Vision(ビジョン)

膝痛に悩む生活からの離脱をサポートする目標

③ Passion(パッション)

患者さんに一人一人に情熱をもって診療にあたる

④ Decision(デシジョン)

適切な診断を行い、治療法の選択肢を提示し、選択を決断すること

⑤ Action(アクション)

適切な治療法を選択し、個々にマッチした加療を行う実行力

当科 Knee Clinic の特徴

当科KneeClinicでは、以下のような特徴、基本的な考えをもとに、日々診療にあたっています。

① 障害、損傷部位の正確な診断、治療方法の選択肢提供

② 損傷部位の修復・再建手術(関節温存手術)

③ 必要最低限の人工関節部分置換術(UKA、PFA、BKAなど)

UKA: Uni Compartmental Knee Arthroplasty; 膝単顆置換術
PFA: Patello Femoral Knee Arthroplasty; 膝蓋大腿関節置換術
BKA: Bi‐Compartmental Knee Arthroplasty; 膝2顆置換術

④ より正確なカスタムフィッティングを可能にするCAOS技術の導入

CAOS (Computer Assisted Orthopaedic Surgery): コンピュータ支援整形外科手術手技(ロボット支援手術技術やナビゲーション手術技術、3Dテンプレートなど、コンピュータ技術を用いた最新の整形外科手術支援技術)

① 障害、損傷部位の正確な診断、治療方法の選択肢提供

患者さんは、膝由来の疼痛や障害に困り、その診断や治療をご希望され、当クリニックを紹介受診されます。まず、患者さん各々の症状はそれぞれで、その背景も全く各々で異なりますので、年齢や活動性、生活背景、職業やスポーツ歴など、詳しくお尋ねします。そのうえで、疼痛や障害部位を確認、理学所見、レントゲンやMRIなどの画像所見などから、総合的に診断していきます。

診断結果から治療方法の提示を行います。当科で現在提供が可能な治療方法を示しますが、患者さん各々の背景を考慮し、治療方法、特に手術加療方法の選択肢を可能な限り提示できるようにしております。観血的にはなりますが、関節鏡を施行することで、直接、膝関節内の状態を確認、動的評価を行った上で最終診断とし、更なる手術方法の選択を可能にもしております。

② 損傷部位の修復・再建手術(関節温存手術)

O脚変形が矯正され軽度X脚になっています

関節温存手術をまず基本に考慮します。

半月板損傷を認めれば、可能な限り半月板の修復手術、必要最低限の損傷部位の部分切除術を施行しています。

靭帯損傷に対しましては、靭帯修復手術、靭帯再建術を施行しています。

軟骨損傷に対しましては、局所的な軟骨損傷に対しましては、骨髄刺激法(ドリリング法、マイクロフラクチャー法、アブレージョン法など)や、自家骨軟骨柱移植術、などで軟骨修復を目指し、より広範な軟骨損傷に対しましては、広島大学・越智学長がご考案されました、自家培養軟骨移植術を施行しています。より広範な軟骨損傷に対しましては、以上の軟骨修復手技に加えて下肢アライメント矯正に、膝周囲骨切り術(Around the Knee Osteotomy; AKO)を併用施行しております。

しかしながら、骨切り術は人工的な骨折・固定手術となるため、骨癒合に一定期間の時間を必要とし、ある程度の骨強度を必要とします。また、骨癒合後には骨内異物除去術も基本的には必要となり、変形が高度または広範に進行している患者さんや、骨粗鬆症が進行した患者さん、活動性がそれほど高くない患者さん、などには人工膝関節置換術が適応になってきます。

③ 必要最低限の人工関節部分置換術(UKA、PFA、BKAなど)

UKA: 膝単顆置換術
PFA: 膝蓋大腿関節置換術
BKA: 膝2顆置換術

より変形の程度が進行した場合には、膝の表面を削って人工物によりカバーする人工膝関節置換術を行っております。

膝関節は主に3つ区画、すなわち内側コンパートメント、外側コンパートメント、膝蓋大腿コンパートメント、の3つのコンパートメントが組み合わって共同して複雑な動きを行っております。

3つの区画が広範に損傷している場合や、O脚やX脚が高度な場合、膝の伸びや曲がりの制限が進行している場合などは、全ての3つの区画を取り換える、人工膝関節全置換術 (Total Knee Arthroplasty; TKA) の適応となります。

しかしながら、患者さんによっては、"膝の内側(または外側、もしくは膝蓋-大腿関節)だけが極端に痛むが、他は全然痛くない、何ともない。ここだけ何とかして欲しい"、と言われる患者さんもおられます。1つ(2つの場合もあります)のコンパートメントだけが極端に傷んでいて、その他のコンパートメントはそこまで傷んでいない、膝の靭帯がしっかりと効いている場合は、傷んだコンパートメント1か所(2か所)だけ、必要最低限、人工関節に入れ替える、膝部分置換術が可能な場合があります。

膝の人工関節は、歯の治療と全く同じとは言えませんが、例えとしては分かりやすいものと思いますので、その例えを使って説明します。

歯は、前の歯・右側の歯・左側の歯、と大きくは分けられると思いますが、例えば、左側の歯だが虫歯や抜けてダメになった場合、そこだけインプラントや部分入れ歯などにします。他の治療をしなくてもよい、健全な歯は治療を行わないと思います。"左の歯、ダメですが、この際一緒にすべて治療して、総入れ歯にしましょうか?"、と言われることは無いと思います。患者さんも、必要最低限・必要十分な治療を希望されると思います。

膝部分置換術は同様の考えで、患者さんにとって必要最低限・必要十分な治療の選択肢になりえると考え、まず最初に部分置換術で対応できないかどうか、と考えています。

膝部分置換術は、手術侵襲が全置換術に比べ少ないため、手術侵襲は全置換術に比べ少なく、回復も早くなり、もともとの膝の状態で変わりますが、正座が可能な患者さんも多くおられます。

当科では膝部分置換術の最終診断・適応を、手術の時の関節鏡を用いて行っております。他のコンパートメントが温存可能か、靭帯や半月板が機能しているか、損傷していないか、直接関節内を拡大視・動的に診ることにより、より正確で確実な最終診断を行っておりますので、膝の状態によっては、膝部分置換を予定していても、途中で全置換術に変更しなければならない場合もあります。ただ、当科で膝部分置換術を受けられた患者さんの生存率(手術後に部分置換術の追加や全置換術への変更が必要にならなかった割合)は、ほぼ100%です。

内側部分置換術(内側UKA)
全置換に比べ侵襲が少ない
外側部分置換術(外側UKA)
十字靭帯・他コンパートメントを温存
内側+PF(膝蓋-大腿関節)の2か所の部分置換術(BKA)、十字靭帯・外側を温存

④ より正確なカスタムフィッティングを可能にするCAOS技術の導入

CAOS (Computer Assisted Orthopaedic Surgery): コンピュータ支援整形外科手術手技(ロボット支援手術技術やナビゲーション手術技術、3Dテンプレートなど、コンピュータ技術を用いた最新の整形外科手術支援技術)

現在、使用されている人工膝関節は基本的には"既製品"の人工膝関節を、大腿骨や脛骨の関節面を削って設置しているものとなります。そのため、全く個人の元の形状に100%修復できるものではありません。内側の形状が、患者さんの元の形態にほぼマッチしていても、外側や大腿骨滑車部(膝蓋骨の通り道)は全然マッチしていないことは多く見受けられます。そのため、術前の手術計画が非常に重要になっています。

以前は、レントゲンの正面像と側面像で"だいたいこれくらいのサイズで、こんな感じになる"といった2-次元での術前計画でしたが、現代では、術前の患者さんのCTデータを用いることで2次元データを3次元化し、3Dのインプラントテンプレートを用いることで設置方向や角度をかえることが可能で、3Dインプラントのサイズや形状の評価を行うことができ、術前に"より各個人にカスタマイズされた"術前計画が可能となっております。

より正確な、各個人によりカスタマイズされた術前計画通りの手術計画を遂行するためには正確な手術技術が求められます。しかしながら、人間のすることにはエラーが生じることも事実で、そのエラーを可能な限り低減させる必要があり、術者の手術技術の向上はもちろんのことではありますが、その確実なエラーを低減させる技術がCAS(Computer Assisted Surgery)となります。

現在、泌尿器科や外科領域の手術で、ロボット支援手術(da Vince)が保険収載され日常的に行われるようになっておりますが、この近年の整形外科領域におけるコンピュータ支援手術手技も目覚ましく発達しております。人工膝関節置換術(全置換術、部分置換術)は、体内埋め込み型のインプラントを用いる手術となりますので、その良好な長期成績のためには、正確なインプラント設置は極めて重要になります。人工膝関節置換術後の長期成績不良症例を、可能な限りゼロにすることを目標に、当科では2014年よりコンピュータナビゲーションシステムを導入し、その良好な設置を報告してきました。現在、当科での人工膝関節手術のコンピュータナビゲーションシステムの使用割合はほぼ100%で、ほぼ全症例においてコンピュータ支援手術を行っております。

さらに、2022年5月からは、広島市内で初となる人工膝関節手術支援ロボット(CORI)を導入します。骨切り精度は高く、骨を1mm、1度以下の誤差で掘削できコンピュータ制御され、より正確で、より低侵襲で、より安全な手術が可能となり、術後のリハビリや社会復帰がよりスムーズになるものと考えられ、より長期の安定した成績が期待されています。

診療実績

Navigation (KneeAlign2, OrthoAlign, USA) を用いた人工膝関節置換術
Navigation (KICK Navigation, BrainLab, Germany) を用いた人工膝関節置換術
人工膝関節手術支援ロボット(CORI)を導入

以下に、当科Knee Clinicで扱っております主な疾患について説明します。

膝前十字靱帯損傷

膝前十字靱帯損傷は、膝の外傷の中でも高頻度で発生する外傷です。特にスポーツ活動中での受傷が多く、受傷により活動性は大きく損なわれ、また治療をしないで放置した場合、多くは半月板や軟骨が傷み、徐々に膝全体がこわれてしまう、変形性膝関節症になる可能性があります。

膝前十字靱帯とは?

正常な前十字靱帯です(左膝)
膝には太ももとすねをつなぐ靭帯が主に4つありますが、前十字靱帯は膝の前後や回旋の安定性に重要な役割を果たしています。前十字靭帯は大腿骨の外側後方から脛骨の前方についています。

前十字靱帯はどんな時に受傷する?

バレー、バスケットボール、サッカーなどでの急激なストップ、カッテイングやジャンプ着地時などに膝を捻って生じる非接触型損傷と、ラグビーのタックルや柔道中など予期しない外力で膝を捻って生じる接触型損傷があります。

前十字靱帯損傷の症状は?

初回受傷時(急性期)には、多くの場合"ブチッ"というポップ音を感じ、以下のような症状(エピソード)がでます。

  • 歩行不能(スポーツ中の場合、起立不能となり抱えられ退場
  • 膝の痛み、腫れ(当日の夜は、関節内に出血し、腫れによる痛みを感じます
  • 陳旧例(慢性期)になると、"膝が抜ける"ような不安定感を感じるようになります。
断裂した前十字靱帯です。右側は、靱帯が消失しています

前十字靱帯の損傷後の経過は?

20年放置した例、変形性膝関節症になっています

多くの場合、受傷時の痛みは数日で軽減し、歩けるようになります。数週間経つと軽く走れるようになり、そのまま見逃されるケース多いです。この靭帯は損傷するとほとんどの場合、靭帯は損傷したままで、回復は望めません。そのため膝には不安定性が残存します。膝が"ガクッ"と抜ける膝くずれを繰り返し起こすこととなり、半月板や軟骨の損傷を起こしてしまう可能性があります。そのまま放置し、損傷が広がった場合、変形性膝関節症になる可能性があります。

前十字靱帯損傷の診断はどのようにされるの?

当科膝関節外科専門医により、ほとんどのケースが触診により診断が可能です。MRI検査は、前十字靱帯損傷の確認、半月板損傷や軟骨損傷など、その他の合併損傷をみるために補助診断として用いています。

前十字靱帯損傷の治療方法は?

保存療法

膝周囲筋の筋力増強訓練を行い、ジャンプ動作やひねり動作の禁止など、生活指導を行います。

手術療法

損傷、断裂した靱帯を再建する手術(靱帯再建術)を行います。

  1. 若年者で活動性が高い人
  2. 中高年者でスポーツ活動をする人
    手術加療の適応となります。
  3. スポーツをしない人
    膝くずれを起こすことなく過ごすことも可能です。しかし、日常生活上、不安定性を感じる場合は手術加療を受けられることをお薦めします。

前十字靱帯損傷の手術方法は?

再建された前十字靱

損傷した前十字靱帯を、修復しても元のように機能しないため、靭帯を新たに再建する"靭帯再建術"を行っています。損傷した前十字靱帯の代わりになるものとして、膝の内側にある「膝屈筋腱」の一部を使用、再建靱帯として代用しております。膝をまげるための腱ですが、採取しても膝を曲げるのに大きな影響はなく、しっかりとリハビリしていけば、筋力はほぼ回復してきます。靭帯再建時にできるキズからこの腱をとることができるため、新たなキズは増えません。キズはすねの内側に3-4cmほどです。

また内視鏡(関節鏡)を使って、からだへの影響を最小限におさえて手術を行います。関節鏡視下に、本来の前十字靱帯の付着部にトンネルをあけて、正常のACLと同じ位置になるように自分の腱から作成した移植腱を骨のトンネルの中に通して、前十字靱帯を再建します。

手術の後のリハビリは?

術直後~術後4-5日

膝は簡易な装具で固定、筋力増強訓練を開始します

術後4-5日~

装具を装着し、可動域訓練を開始します

術後7日~

部分荷重訓練を開始、徐々に荷重量を増やしていきます

術後約2週

松葉杖歩行で退院

術後4~5ヵ月~

ジョギングを開始します

術後10カ月~

筋力が十分に回復し、膝の感触が正常化した上で、スポーツに段階的に復帰していきます

膝半月板損傷

半月板損傷の症状

半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にあるC型をした軟骨様の板で内側・外側にそれぞれがあり、クッションとスタビライザーの役割をはたしています。これが損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みひっかかり感を感じたりします。ひどい場合には、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる"ロッキング"という状態になり、歩けなくなるほど痛くなります。

半月板損傷の原因

スポーツなどの怪我から生じる場合と、加齢により傷つきやすくなっている半月に微妙な外力が加わって損傷する場合とがあります。半月は加齢に伴い変性するので、40歳以上ではちょっとした外傷でも半月損傷が起こりやすくなります

  • スポーツ中に、膝を捻ってしまって膝が痛みだして...
  • テニスのスウィングの時、サッカーのキックの時、膝が痛くなって...
  • こたつから立ち上がる時から、膝が痛くなって...
  • 階段を降りる時に、膝が痛み始めて...
  • 以前、膝前十字靭帯を痛め、グラグラしていたけど放置。最近、膝が引っ掛かりだして...

原因が様々であるため、損傷の形も様々で形態により変性断裂、水平断裂、縦断裂、横断裂に分類されます。損傷の状態によっては放置すると、さらに関節軟骨を傷めることもあります。

半月板損傷の診断

半月板損傷を認めます

徒手検査や症状の経過からも予測可能ですが、単純X線(レントゲン)写真では半月は写りません。症状や診察で半月損傷を疑えばMRI検査を行います。MRIは非侵襲性で半月損傷の病態や合併する靭帯損傷の診断にも有用です。

半月板損傷の治療

リハビリテーションや抗炎症薬の処方など保存的治療で症状が改善する場合がありますが、改善しない場合には手術を行います。

手術法には

  1. 切除術(損傷した部分を切り取る)
  2. 縫合術(損傷した部分を修復します)

の2種類があり、通常は関節鏡を使った鏡視下手術を行います。

変形性膝関節症

日本人の患者数は約1000万人とも言われ、非常に多くの方が膝の痛みに悩まされている疾患です。中高年の女性に多く発症し、加齢とともにみられやすくなり、高齢者では女性の発症は男性の4倍といわれ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。

症状

主な症状は、膝の痛みと水がたまることです。

初期

膝に違和感がある、立ち上がりや歩きはじめなど動作の開始時に痛む

中期

膝が曲がりきらず正座がムリ、階段の昇降(特に降りるのが痛む)が困難

末期

安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝が伸びなくなり歩行が困難

O脚変形
末期の変形性関節症
関節鏡視下手術。1cm程の創から関節鏡を挿入し、モニターを見ながら手術をします。

原因と病態

原因としては、膝関節の荷重をささえるクッションの役割である関節軟骨が、年齢とともに弾力性を失い、つかい過ぎにより磨り減り、老化していくことによると考えられています。その要因としては、①加齢、②肥満、③O脚、④筋力の低下、⑤骨折や靱帯損傷、半月板損傷などの外傷、⑥化膿性関節炎などの感染の後遺症、などが挙げられます。いろいろな要因が絡み・引き金となって、徐々に関節が変形、症状が悪化していきます。

診断

問診や診察(触診で圧痛の有無、関節の可動性、腫れやO脚変形などの有無)、レントゲン検査で診断します。必要によりMRI検査などを行います。

予防と治療

日常生活上の注意点、予防法としては、①正座をさける ②肥満であれば減量する ③膝をクーラーなどで冷やさず、温めて血行を良くする ④重い荷物を持たない ⑤生活様式を洋式にする(洋式トイレ、ベッド、イスなどを使用する) ⑥ウォーキングをする、などが挙げられます。

変形性膝関節症の治療方法には、保存療法と手術療法があります。

保存療法

薬物療法
消炎鎮痛剤の内服や外用、膝関節内注射など
運動器リハビリテーション
大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練など
物理療法
膝患部を温め血行を良くし痛みを和らげ関節や筋肉の硬さをほぐす
装具療法
足底板や膝装具を作成、装着

などがあり、これらを組み合わせてまず保存治療を行います。

保存療法を行っても十分な効果が得られず症状が悪化してしまった場合は、手術治療が検討されます。

手術療法

関節鏡視下手術

膝の中に内視鏡を入れて行う手術です。主に、変形し損傷した半月板や軟骨片など、ひっかかりや疼痛の原因となるものを取り除きます。手術時間は約30~60分程度ですが、術後の安静のため約1週間前後の入院加療が必要になります。

高位脛骨骨切り術

脛骨(すねの骨)を切って、荷重軸を変更する手術です。多くはO脚変形を矯正して、軽度のX脚にして、体重をさせる位置を外側にします。骨癒合に時間が必要なため、約2週間程度の入院期間が必要になります。

人工膝関節置換術

変形した膝の表面を削って、人工の関節に置き換える手術です。膝が高度に変形した患者さんが適応となります。術後のリハビリのために、約2週間程度の入院期間が必要になります。

内側半月板損傷を認め切除術を施行
高位脛骨骨切り術で下肢を矯正
人工膝関節全置換術 (TKA)

膝の病気の予防と治療

年齢を問わず膝を痛めると歩行やスポーツに支障を来し、充実した日常生活を送ることが困難となります。今回は、当院でも多くの方が通院治療や手術加療を受けられている変形性膝関節症について解説します。

中高齢者を悩ませている膝痛の原因の多くは、変形性膝関節症によるものです。変形性膝関節症では、イスからの立ち上がり、歩き始め、階段をおりる時(図1)などに膝痛を生じます。中高年の女性に多く発症し、加齢とともにみられやすくなり、日本人の患者数は約1,000万人、有病者数は約3,000万人と言われています。

初期の症状は動作開始時の膝痛ですが、徐々に正座や階段昇降が困難になり、だんだんと膝は伸びなくなり、歩行が困難となってきます。

原因は、膝の荷重を支えるクッションの役割である関節軟骨が、年齢とともに弾力性を失い、摩耗し、すり減っていくことによります。

日常生活上の注意点・予防法としては、①正座をさける ②肥満であれば減量する(図2) ③膝をクーラーなどで冷やさず、温めて血行を良くする ④重い荷物を持たない ⑤生活様式を洋式にする(洋式トイレ、ベッド、イスなどを使用する) ⑥ウォーキングをする、などが挙げられます。

変形性膝関節症の治療方法には保存療法と手術療法があります。保存療法は、リハビリ指導(図3)、薬や注射(図4)、装具療法などを行います。変形は退行性変化によるものであるため、元に戻ることはありません。症状を緩和させ、できるだけ病状が進行しないことを目的に行います。

病期が進行し、症状が悪化してしまった場合は手術療法を行います。手術療法としては、①関節鏡視下手術(図5):損傷した半月板や軟骨片など、ひっかかりや疼痛の原因を内視鏡下に取り除く手術 ②高位脛骨骨切り術:脛骨を骨切りし、荷重軸を変更する手術 ③人工膝関節置換術(全置換、部分置換(図6)):変形した膝の表面を削って人工の関節に置き換える手術、などがあり、患者さん各々の年齢や活動性、症状や変形の程度などを熟考し、手術方法を選択します。いずれも専門性の高い手術ですので、膝関節専門のトレーニングを受けた専門医に受けられることをお勧めします。

当科ではこれまで多くの膝痛に悩む患者さんの治療を行い、より充実した生活への復帰をサポートしてきました。膝に関する痛みやお悩みがありましたら、お早めにかかりつけ医にご相談ください。

ortho-nishimori201610

(整形外科部長 西森 誠)


以上のような手術方法がありますが、患者さん各々の年齢や活動性、症状や変形の程度などを熟考した上で手術方法を選択しなければいけません。いずれの手術も、膝関節専門のトレーニングを受けた専門医に受けられることをお勧めします。

当科においては、個々の患者さんに対して治療方針を決定して参りますので、痛みや治療に関するお悩みなどがありましたら、是非お早めにご相談下さい。