食道がんの治療

消化器外科

当科では、食道良性疾患(食道良性腫瘍、食道破裂、食道裂孔ヘルニアなど)および食道悪性疾患(食道がん)に対する治療を行っています。

食道がんの治療法を決める前に、がんがどの程度進行しているかを詳しく調べる必要があります。がんの進行の程度は「病期(ステージ)」で分類されます。「病期」は、①がんの深さ(食道の壁のどこまで広がっているか)、②リンパ節への転移の程度、③別の臓器(肺や肝臓など)への転移があるか、の3つの因子の組み合わせで決定されます。

がんが食道の壁の浅い所(粘膜)にとどまっているような場合は、内視鏡的切除で治癒が期待できます。それ以上に「病期」がすすんでいる食道がんに対しては、外科治療、薬物療法(化学療法、免疫チェックポイント阻害剤)、放射線治療を、単独もしくは組み合わせて治療をおこないます。それらの組み合わせ方は、「病期」ごとに決まっており、標準治療(最も効果が高い治療法)と言われます。しかし、ご年齢やお体の状態によっては標準治療が困難な場合もあります。そのため、患者さんとご家族のご希望をしっかりとお聞きした上で、治療方針を決定するようにしています。

当科には食道外科専門医が3名常勤しており、毎年20例程度の食道がん手術を行っています。食道がんの手術はお体への負担が大きいため、手術後の生活の質を落とさないように、基本的には小さな傷でがんが切除できる胸腔鏡下手術を行っています。また、より確実にがんを切除できるようにさまざまな手術方法の改善をおこなっています。当院はロボット手術が行える体制が整っていますので、将来的には食道がんの手術への導入を予定しています。

手術で切除ができない場合には、薬物療法または、薬物療法と放射線治療を組み合わせた治療を行うこととなります。2020年には従来の抗がん剤に加え、免疫チェックポイント阻害剤も食道がん治療に使用できるようになりました。当科、放射線科、緩和ケア科で連携を密にとり、患者さんのお体の状態・がんの進行の状態に応じて最良の治療が提供できるように心がけています。また、当科はJCOG(Japan Clinical Oncology Group:日本臨床腫瘍研究グループ)の食道がん治療を専門とする組織に参加しており、最新の治療法を患者さんに提供していくとともに、標準治療の確立を目指した研究にも参加しています。