消化器外科

ご挨拶

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新病院に移転して2年が経過しました。病院周囲に植樹された桜がようやく花を咲かせ、新病院が地域に生着してきたのを実感しております。また昨年中盤からCovid-19感染症に伴う様々な規制も徐々に緩和され、少しずつ通常診療が回復しつつあります。

我々「消化器外科」は2021年度の診療科再編成により「外科」が「呼吸器外科」、「乳腺外科」、「肝胆膵外科」、「消化器外科」に細分化され開設しました。消化器外科では食道・胃・大腸などの悪性・良性疾患、外傷治療を行っています。当科では上部消化管(食道/胃)グループと大腸グループに分かれチーム医療を行っています。それぞれのチームに消化器外科専門医/指導医、内視鏡外科学会技術認定医、ロボット手術指導医(プロクター)などの資格を有し、かつ各疾患専門資格を持ったエキスパートが複数名在籍しており、チームの中心となって診療に当たっています。

当院はがん診療連携拠点病院ですので、主に悪性疾患を対象として診療を行っています。手術療法以外にも化学療法、放射線治療、緩和医療など進行度に合わせた治療を提供できる体制を整えています。毎週月曜日には消化器内科、消化器外科、病理部が集まり「消化管カンファレンス」を開催し、症例ごとに治療方針を検討しています。そのカンファレンスの結果を踏まえ患者さんと話し合い、根拠に基づいた医療(Evidence based medicineEBM)であるガイドラインを基本とし、"共有意思決定(Shared decision makingSDM)"を取り入れ各患者さんに合った最良の医療を提供しています。また緩和医療においては緩和ケアチームも介入し"アドバンス・ケア・プランニング(Advance care planningACP)"を行い、患者さんが大切に感じていることを守る様心がけています。

 当科の手術療法は根治性を維持しながら、低侵襲で機能温存することを目標としています。胸腔鏡・腹腔鏡手術よりも精緻な手術が行え、周術期合併症の減少が期待されるロボット支援下手術は、2018年より胃がん・直腸がん手術で導入しました。その後順調に症例を重ね、現在では大腸がんや膵がんもロボット支援下に手術を行っています。当院には胃・大腸・直腸・膵臓のロボット支援下手術指導医が在籍し、2023年は全手術の7割が腹腔鏡・胸腔鏡あるいはロボット支援下手術で行われました。2024年からは食道がんロボット支援下手術指導医も在籍するようになり、食道がんに対してもロボット支援下手術を開始します。

 これからも当院消化器外科は、根治性を担保しつつ、患者さんの希望に沿った、低侵襲で機能温存が可能な手術を、合併症なく提供できるよう、全力で診療に当たりたいと考えています。

消化器外科 主任部長 徳本憲昭

「根拠に基づいた医療(Evidence based medicineEBM」とは

個々の患者さんの診療にあたり、最近までの研究から得られたデータの中から信頼できるものを見つけ、それに基づいて理に適った診療を行うことを言います。
ガイドラインなどを基として、患者さんと話し合い、臨床医としての知識と経験を最大限に発揮して最善と思われる治療法を選択します。

「共有意思決定(Shared decision making:SDM)」とは

医療者と患者さんがエビデンス(科学的な根拠)を共有して一緒に治療方針を決定すること。
エビデンスのみにとらわれた治療方針決定ではなく、患者さんの希望・意思を反映した治療方針決定過程を言います。

「アドバンス・ケア・プランニング(Advance care planningACP)」とは

"人生会議"とも呼ばれます。患者さんが大切にしている事や望み、どのような医療やケアを望んでいるか、ご自身で考えていただくとともに信頼する人たちと話し合うことを言います。万が一の際に、患者さんの心の声を伝えるかけがえのないものになり、また大切な人の心の負担を軽減すると言われています。

「根治性」とは

病気を根本から完全に治すこと。がんをすべて取り除くことを目標とし、がん自体の切除に加えて、再発や転移が起こらないように、がんが広がっている可能性がある臓器や組織なども含めて切除することを言います。

「低侵襲」とは

患者さんの体に対する侵襲(負担)を減らした体に優しい治療を言います。患者さんの体の負担を小さくし、治療後のQOLを向上させることを目的としています。

手術件数

当院での食道がん・胃がん・大腸(結腸/直腸)がんの手術件数

2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
食道(開胸開腹) 1 3 3 5 2 0 0
食道(鏡視下) 12 16 13 12 10 12 18
食道合計 13 19 16 17 12 12 18
胃(開腹) 55 46 56 31 35 25 15
胃(鏡視下) 39 33 34 32 37 33 40
腹腔鏡 (39) (31)

(11)

(18) (11) (6) (9)
ロボット (0) (2) (23) (14) (26) (27) (31)
胃合計 94 79 90 63 72 58 55
大腸(開腹) 33 35 30 28 30 33 34
大腸(鏡視下) 153 154 153 137 183 145 183
腹腔鏡 (153) (154) (141) (113) (146) (99) (118)
ロボット (0) (0) (12) (24) (37) (46) (65)
大腸合計 186 189 183 165 213 178 217
全体合計 292 287 288 245 297 248 290

この他、救急疾患も積極的に診療しており、年間約200例の緊急手術を行っています。