「胃がん発生リスク診断法の研究」へのご協力のお願い

消化器内科

ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)は日本人の約半分が感染しているといわれています。ピロリ菌が胃に感染していると将来約10%の確率で胃がんになるとされていますが、逆にピロリ菌感染が無ければほとんど胃がんになりません。ピロリ菌感染により胃粘膜に慢性炎症(慢性胃炎)が起こり胃粘膜の細胞に遺伝子異常が生じることが胃がんの原因の一つであることが分かってきました。遺伝子の異常は多くの種類がありますが、国立がん研究センターの研究により胃がんは「DNAのメチル化」という遺伝子の異常(遺伝子のひっかき傷)が主な原因とされています。「DNAのメチル化」は一つの細胞が様々な機能を持つ細胞に変化することを調節しています。しかしピロリ菌感染で慢性胃炎が起こり「DNAのメチル化」が過剰に蓄積すると胃がんが発生してきます。

2013年から慢性胃炎でピロリ菌陽性と診断された人は、胃がん予防を主な目的として除菌治療ができるようになりました。ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生頻度は低下(1/2〜1/3)しますが、胃がんができる可能性は残ります。そこでピロリ菌除菌後に将来の胃がんの発生リスクが高いか低いかを予測する方法の一つとして、胃粘膜の「DNAのメチル化」異常の測定が注目されました。ピロリ菌除菌後に「DNAのメチル化」異常の量が多い人が胃がんになりやすいことを証明するために、2014年から国立がん研究センターを中心に全国の病院で臨床研究として行われており、当院も参加しています。この研究でピロリ菌除菌後に「DNAのメチル化」異常の量を測定することで胃がんの発生リスクが予測できることが証明されれば、胃がんのリスクの高い人は毎年の内視鏡検査、低い人は3年に1回というように検査を減らすことができるかもしれません。

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研究の対象となる人は20歳以上75歳以下でピロリ菌を除菌した高度の慢性胃炎を有する人です。方法は初回の内視鏡検査の際に、通常の組織検査と同様の方法で胃粘膜組織2か所を採取し胃粘膜の細胞の「DNAのメチル化」異常を測定します。その後、年1回の内視鏡検査で5年間、胃がんが発生しないか経過観察します。

該当する方には当院担当医からご説明させていただきますので、本研究にご参加いただき、ご協力をお願いいたします。