腹部動脈瘤手術

心臓血管外科

特徴

腹部大動脈瘤は、動脈瘤の中で最も多い動脈瘤です。原因は動脈硬化・高血圧などで発生し、瘤の直径が4cm以上に膨れると破裂する可能性があり手術が必要となります。

当院での特徴

  1. 待機手術死亡が今まで500例中1例0.2%と良好であること。
  2. 開腹手術は、小切開で行い、早期離床・退院を目指していること。
  3. 2007年から両足の付け根を3cm程度切開して、カテーテルでステントグラフトを挿入するカテーテル治療を行っていること。(大動脈瘤に対するカテーテル治療の概要を参照
  4. 県北一帯からという当病院の地域性から破裂例が多いことです。破裂例の手術成績は、近年術式の工夫により死亡率は低下していますが、未だに10〜20%程度あり、未破裂のうちに早期発見されるよう、今後一層の地域啓蒙が必要であると考えています。
  5. 最後に、腹部大動脈手術は日常生活が自立できている方ならたとえ90歳以上でも手術適応にしています。破裂する前に治療しましょう。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療について

当科では腹部大動脈瘤に対して、2007年7月よりステントグラフト内挿術の施行を始めました。おなかを開けることなく、両足の付け根に3cmほどの小切開を加え、カテーテルの中にバネ付きの人工血管を挿入し、動脈瘤の部分でこのバネ付き人工血管をカテーテルから押し出して留置します。これにより瘤の部分に高い血圧がかからないため、破裂の危険がなくなります。通常の開腹手術に比べて、体への負担が少ないのが特徴です。

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使用するステントグラフト
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血管造影
左:治療前 右:治療後

ステントグラフト治療の適応となる患者さんは?

原則は従来の開腹による人工血管置換手術が第一選択となります。

しかし、以下の二つの基準を満たす方はステントグラフト治療の適応となります。

1. 手術が困難な症例

(ア)85歳以上の高齢者や認知症のある方
(イ)肺機能が極端に低下している方
(ウ)開腹手術の既往、特に膀胱や大腸の手術を受けたことがある方

など 従来の開腹による置換術が危険であると判断される方。

2. 瘤が解剖学的基準を満たしている症例

(ア)腎動脈から大動脈瘤までの距離
(イ)大動脈瘤や血管の蛇行の強さ

など ステントグラフトを安全に挿入・留置できる瘤の形である方。