麻酔科

ご挨拶

当院は日本麻酔科学会の麻酔科認定病院、日本専門医機構の広島大学麻酔科専門研修プログラム専門研修連携施設です。

最近のテレビドラマ等で手術のシーンがよく出てきます。麻酔は手術には欠かすことのできない重要な要素のひとつであるにもかかわらず、ほとんど光が当たることがありません。麻酔科医は黒子の様な地味な存在ではありますが、当院では手術を受ける患者さんひとりに対して資格を持った1名以上の麻酔科医が常にそばにいて安全を守り、手術がうまく進行するように尽力していますのでご安心下さい。
スタッフは15名で、このうち女性が8名と半数を占めています。日本麻酔科学会指導医6名、日本専門医機構専門医10名、麻酔科専攻医3名です。麻酔科標榜医は13名在籍しています。
2022年5月より新病院となり、手術室も11室に増えました。手術件数も増加の一途を辿っています。2023年度は手術室では5891件手術が行われました。麻酔科はこのうち、局所麻酔のみでおこなわれる手術(小手術)を除いた4370件(74%)の手術を担当しています。このうち15%が緊急手術でした。病床当たりの手術件数は国内のトップクラスに位置しています。ほとんどが意識と痛みを薬剤によりとる全身麻酔ですが、ごく一部で区域麻酔(いわゆる下半身麻酔、正式には 脊椎麻酔、硬膜外麻酔など)で行うことがあります。
最近では高齢者(62%)や多くの併存疾患のある患者さんの手術が増加しています。安佐北区や広島県北西部は高齢化率が高く、それを反映して後期高齢者は36%、90歳以上の高齢者は2%を占めています。予定手術の場合は、周術期管理チームとして医師・看護師・薬剤師などが術前の早期から関与しています。麻酔科外来にて術前診察を行い、手術前に患者さんの状態を評価し、より安全な手術を受けていただけるように万全を期しております。さらに今年度より術後疼痛管理チームを結成し、比較的大きな手術の全身麻酔後の患者さんの生活の質と早期離床を目指した取り組みを強化しました。

よくある質問で「麻酔は1回打ったらずっと効くのですか?お酒を飲むと麻酔が効かないのですか?麻酔が覚めないことがありますか?」などがあります。全身麻酔の場合は点滴から持続的にポンプを使用して麻酔薬を投与する静脈麻酔と呼吸を通じて麻酔薬を投与する吸入麻酔に分けられますが、当院では静脈麻酔が主流です。麻酔科医が患者さんの全身状態や手術の進行に合わせて、麻酔薬の量を調節します。麻酔は必ず効きますし、麻酔薬を中止すると必ず覚めます。手術室には最新の高性能な呼吸・循環・体温・脳波などのモニター機器とハイエンドの麻酔器(1台で高級輸入車が買える価格です)を取り揃えております。患者さんに合った麻酔法を選択し、より安全で質の高い周術期管理を実践しています。

心臓・大血管手術、食道癌に対する手術、肝切除、開頭手術などの侵襲の大きな手術の術後は集中治療室で多くの職種が協力して治療にあたります(494件、11%)。日本集中治療医学会の専門医資格を持った医師が治療に当たっています。
その他、手術室外での全身麻酔が増加傾向にあります。内視鏡センターでの消化管のがんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術や放射線科血管造影室(IVR)での脳動脈瘤に対する血管内治療などを受ける患者さんの全身麻酔(182件)を行っています。
術後疼痛の治療も積極的に行っています。硬膜外鎮痛(849件)や末梢神経ブロック(156件)を行っています。さらに専用の電動式ポンプを用いた患者自己調節鎮痛(約1325件)により、患者さんの早期離床、早期社会復帰の支援を行っています。

副院長 麻酔科部長 田中 裕之