認知症地域連携パス

安佐医師会 認知症地域連携パス

認知症の早期発見・早期治療を目指した「もの忘れ外来」と「ひろしまオレンジパスポート」を活用した認知症ケア

はじめに

安佐市民病院と安佐南区・安佐北区の15専門医療機関は認知症の早期発見・早期治療を目指して「もの忘れ外来」を行っています。

齢を重ねるにつれ認知症になりやすくなり、厚労省の発表では高齢者(65歳以上)の約15%が認知症で、現在の認知症患者数は約600万人と推定されています。認知症は放ってはおけない脳の病気です。認知症の診断法は確実に進歩しており、神経診察、神経心理検査、MRI検査、SPECT検査などを組み合わせることで、より正確な診断ができるようになっています。また正確な診断がつけば、最善の治療が可能になります。

『ひろしまオレンジパスポート』は、患者さんと家族・医療・介護・福祉の多職種が記入して連絡し合い、生活状況を把握し、よりより認知症ケアを実現するため広島県が作成した県内共通のツールです。

認知症地域連携パスは、『ひろしまオレンジパスポート』を活用しながら多職種が力を合わせて、地域で認知症の人と家族を支える取り組みです。

認知症は、神経内科医・精神科医・脳神経外科医と、かかりつけ医のチーム医療

認知症の原因には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症といった脳神経の病気である場合以外にも、甲状腺機能低下症、ビタミンB群欠乏症、葉酸欠乏症、高アンモニア血症、電解質異常など内科の病気が基礎にある場合、脳梗塞や脳出血など脳卒中の後遺症である場合と様々です。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫のような脳神経外科で手術を受ければ治る認知症もあります。

脳神経内科医は脳神経の病気、脳卒中、内科の病気に伴う神経症状について日常的に診療しており、認知症の診断は専門分野です。もちろん精神科医にとって認知症は専門分野ですが、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)といわれる暴力、徘徊、不安、幻覚、妄想など様々な行動・心理症状への対応については、まさに専門です。

また、安佐南区・安佐北区には、かかりつけ医認知症対応力向上研修を受け、広島県知事から「オレンジドクター」 (もの忘れ・認知症相談医)に認定されたかかりつけ医(開業医)が100名以上おられます。

脳神経内科医・精神科医・脳神経外科医と、かかりつけ医が力を合わせ、認知症のチーム医療を推進できればと思います。

「もの忘れ外来」への紹介は?

認知症地域連携パスの入り口である「もの忘れ外来」では、正確な診断を行い、認知症のタイプに応じた治療(薬物療法・非薬物療法)を早期から開始することを目的としています。

もの忘れが目立ち新しいことを覚えられない(記銘力障害)、日にちや場所などが分からない(見当識障害)、物事の判断ができない(判断力低下)、いないはずの虫や小動物が見える(幻視)など症状が現れて原則3年以内の患者さんを対象とします。しかし、家族が心配な言動が多く困っている、BPSDのため困っているといった患者さんは経過年数に関わらずご紹介下さい。

ご開業の先生が日々の診療の中で患者さんに認知症の疑いがあることを発見され、ご家族が認知症の精査を当院で受けたいと希望された場合には、いつもと同じ「紹介状 ・診療情報提供書(予約申込書)」に必要事項を記入のうえ、当院の医療連携室を通じて、脳神経内科「もの忘れ外来」(主に早期発見・早期治療)または精神科(主に心配な言動、BPSDの診療)にご紹介ください。

内容によっては両科の協議で紹介科を変更させていただくこともあります。

診察、検査を受けて診断が決まれば、患者さんとご家族に『ひろしまオレンジパスポート』お渡し、紹介元のかかりつけの先生のもとで認知症の治療も併せて受けていただくよう逆紹介させていただきます。ご紹介をよろしくお願いいたします。

安佐医師会 病診・診診連携委員会
認知症地域連携パスWGチーフ
広島市立北部医療センター安佐市民病院脳神経内科 山下拓史

(2021年7月1日)