心臓弁膜症に対する新しい治療について【TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)】
【TAVI】(経カテーテル大動脈弁植え込み術)
北部医療センター安佐市民病院は、広島県北部では初(県内5施設目)となるTAVI(タビ:経カテーテル大動脈弁植え込み術)の実施を開始しました。
当ページ内の動画・資料提供:エドワーズライフサイエンス合同会社
大動脈狭窄症
「大動脈弁狭窄症」とは、左心室と大動脈の間にある「大動脈弁」が加齢や動脈硬化などの原因で開きにくくなる疾患です。心臓から十分な血液を送り出すことができなくなるため、心臓に負担がかかります。軽症のうちは、自覚症状はありません。しかし進行していくにつれて胸の痛みや息切れが起こり、急性心不全、突然死などに至る代表的な疾患です。特にご高齢の患者さんでは、日常生活を無意識におさえるために、重症であっても症状が隠れてしまうこともあります。
治療
重症度が軽い場合、薬で心臓の負担を軽くして経過をみますが、重症大動脈弁狭窄症に至った場合、開胸手術/カテーテル治療について検討が必要です。
【開胸手術】
従来から行われている治療で、大動脈弁狭窄症の手術では第一選択となります。胸を切開して大動脈弁を取り換える方法で長期成績が確立しています。一方で、手術の侵襲が高く体への負担が比較的大きいという特徴があります。
【カテーテル治療(TAVI)】
大動脈弁狭窄症に対するカテーテルを用いた治療です。本邦では2013年から行われています。
胸を開けたり心臓を止めることもなく、足などの血管からカテーテルを用いて新たな弁を心臓に留置しま
す。ほとんどの症例では術後翌日から食事やリハビリを開始します。外科的治療に比べると手術の負担は軽く、入院期間が短いことが特徴です。ただし実用化されて10数年の治療であり、10年以降の治療成績データが詳しく分かっておらず、若年の患者さんには実施していません。
これまでも当院では心臓血管外科による大動脈弁置換術を行ってきました。
しかし、高齢などの理由で心臓手術を受けることができない患者さんは、他施設へ紹介させていただいたり、お薬による治療で経過をみていました。TAVIの実施が可能となったことで、個々の患者さんにより適した治療を選択していただくことが可能となりました。また、TAVI導入にあたり、心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、リハビリテーション科、看護師らによるハートチームを形成しました。当院では、これまで以上に、職種の垣根を超えて心臓病の患者さんの治療にあたらせていただきます。